現在、多くの臨床医が用いてる漢方薬は医療用漢方エキス製剤とよばれるものです。エキス剤の多くは顆粒または粉末で、中には錠剤もあります。エキス剤に対して生薬をグツグツ煮出して作る煎じ薬があります。
エキス剤は毎日時間をかけて煎じる手間が省けます。また携帯に便利であり、保存もできます。しかし、煎じた漢方薬をエキス剤にする過程ですべての漢方薬の成分を含むものは作りにくいようです。煎じ薬は毎日煎じる手間がかかりますが、治療を担当する医師によってさじ加減が出来ます。エキス剤にない処方をどうしても用いたい時やエキス剤では効果が不十分な場合に煎じ薬が使用されるようです。
なお、基本的に医療用漢方エキス製剤と煎じ薬はともに健康保険が使用できます。(ただし、中には保険適用外のお薬もあります。)
漢方が単独で使用可能な場合があります。風邪の初期の場合、脈が触れやすく汗をかいていないもので体力があれば葛根湯を、汗が出ていれば桂枝湯を、脈が触れにくく寒がりで余り元気が無い方が風邪を引いた場合は麻黄附子細辛湯を用いて比較的短期間での治療が期待できます。また、明け方のこむら返りには芍薬甘草湯は大変有効です。そのように短時間で臨床効果が現れる場合もあります。その他、花粉症に対する小青竜湯、膝の痛みに対する防已黄耆湯、頭痛吐き気に対する五苓散など、即効性を期待される漢方がある一方、体質のゆがみの改善を目的とする漢方治療があります。
漢方治療が適する体質としては、アレルギー体質(花粉症・アトピー性皮膚炎・喘息・じんましん)、冷え(月経困難症・月経不順・冷え症・不妊症・頭痛・肩こり)、虚弱・疲労(小児虚弱体質・慢性疲労症候群)、老化(認知症の周辺症状・夜間頻尿・腰痛・気分障害)などがあります。
その他、副作用等で西洋医学治療が困難な病態(胃潰瘍のある患者の頭痛など)、ストレス因子の強い病態などでも漢方は比較的使用しやすいです。