尖圭コンジローマは、性器や肛門のまわりにイボができる誰にでも感染・発症する可能性のある病気(STD:性感染症)です。STDのなかでは、性器クラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペスウイルス感染症に続いて報告が多く、全国で約3.9万人の患者さんがいるといわれています。女性の場合は、主に大小陰唇や腟前庭、会陰、尿道口、肛門のまわりや肛門内といった場所のほかに、腟、子宮頸部など性器の内側にもイボが発生します。
イボの色は白、ピンク、褐色(黒っぽい茶色)、時には黒色とさまざまで、大きさは径1~3ミリ前後から数センチ大までさまざまです。イボは乳頭状(乳首のような形)のほか、ニワトリのトサカやカリフラワーのような状態になることもあります。
患者さまは10代後半~30代の若い人が中心です。男女別でみると、男性は25~29歳にピークが来るのに対し、女性は20~24歳がピークで、女性の方が男性よりも年齢層が少し低い傾向があります。セックスの経験がある人なら誰でも感染・発症する可能性がある病気です。
尖圭コンジローマは自覚症状がほとんどないといわれていますが、かゆみや痛みを感じることもあります。
尖圭コンジローマが起こる原因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染です。HPVにはさまざまな種類があり、尖圭コンジローマを引き起こすタイプのウイルスは主に、セックスやそれに類似する行為により皮膚や粘膜にある小さな傷に侵入して感染します。
尖圭コンジローマは、原因であるウイルスが感染してもすぐにイボがあらわれるわけではありません。ウイルスが感染してからイボが確認できるようになるまで、3週間~8ヵ月(平均2.8ヵ月)くらいかかるといわれています。かゆみや痛みなどが無い場合が多く、いつ発病したかをはっきり覚えていない人もいます。したがって、感染した時期や誰から感染したかを特定するのは難しいのです。
◎大切なパートナーに感染させる恐れがあります
尖圭コンジローマを放置しておくと、大切なパートナーに感染させてしまう恐れがあります。広い範囲でウイルスの感染がある場合は、パートナーがコンドームをしていても確実に感染を予防することは難しいのです。
「もしかして尖圭コンジローマ?」と思ったら、すぐにお医者さんに相談し、診断結果が出て治療が終わるまではセックスは避けたほうが良いでしょう。
◎イボが増え、患部が広がる場合があります
症状がどのように進行するかは個人差がありますが、尖圭コンジローマを放置しておくと、人によってはイボの数が増え、患部が広がることがあります。
◎悪性型のウイルスが潜んでいる可能性もあります
尖圭コンジローマはHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスに感染して発症します。このHPVには、良性型と悪性型があり、尖圭コンジローマは主に良性型のウイルスが原因といわれています。しかし、尖圭コンジローマにかかった人の中から、悪性型のHPVが同時に発見されることがあります。女性の場合、この悪性型のHPVは「子宮頸がん」を引き起こすことがわかっています。
◎妊娠していたら赤ちゃんにも感染する恐れがあります
もしあなたが妊娠しているなら、現在かかっている産婦人科の先生にまず相談してみましょう。尖圭コンジローマは、出産のとき、産道で赤ちゃんにウイルスが感染してしまう恐れがあるからです。その結果、赤ちゃんにも尖圭コンジローマが発症したり、のどにイボができる多発性咽頭乳頭腫がまれにあらわれることがあります。
尖圭コンジローマの治療は、「薬による治療法」と「外科的な治療法」の大きく2つに分かれます。また、「性感染症診断・治療ガイドライン」(日本性感染症学会 発行)においてファーストライン(まず最初に選択される治療法)として分類される治療法を★印で示しています。
当院では薬による治療のみ行っております。
コンジローマ治療薬として世界の75以上の国と地域で使われている塗り薬が、2007年12月、日本でも健康保険が適用される薬として発売されました。病院で処方してもらうことにより、自分でイボに直接塗って治療することができます。
いずれも外来で行われる小手術あるいは日帰り入院手術として行われます。
◎凍結療法★
麻酔はせずにイボを液体窒素で何回か凍らせて取り除く治療法です。
◎電気焼灼★
イボの周囲に麻酔をして、電気メスで焼く治療法です。
◎炭酸ガスレーザー蒸散
イボの周囲に麻酔をして、レーザー光線で取り除く治療法です。
◎外科的切除
イボの周囲に麻酔をして、専用の器具で切除する治療法です。
尖圭コンジローマは治療時に見えているイボを取り除いたとしても、ウイルスが残っている可能性があるため、再発を繰り返し、治療が長引く場合があります。もし再発しても根気よく病院に通い、治療を続けることが大切です。