両側卵巣の多嚢胞性腫大に、月経異常(無月経・無排卵周期症など)、不妊を伴い、血液検査でLH(黄体形成ホルモン)高値を認める内分泌疾患を多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と言います。
超音波検査では、両側卵巣に2-8㎜程度の嚢胞状の卵胞を多数認めます(ネックレスサイン)。何らかの内分泌学的異常によって卵胞発育が抑制されることが原因と考えられています。
また、多毛やにきびなどの男性化徴候やテストステロン(男性ホルモン)高値、肥満を呈する場合もありますが、日本では欧米に比べてその頻度は低いとされています。
月経異常や不妊を訴えて婦人科を受診される方のなかから診断されることが多く、排卵障害の1割以上を占めます。PCOSの原因は視床下部―下垂体、卵巣、副腎皮質の機能異常やインスリン抵抗性などが複雑に絡んでいるものと推定されますが、詳しくは解明されていません。
挙児希望の有無により治療法は異なります。
◎ 薬物療法(月経異常に対する治療)
- 黄体ホルモン:周期的に消退出血を起こします。
- 低用量ピル(OC):定期的な出血を起こす効果の他に、LH分泌の抑制や卵巣由来の男性ホルモンの過剰を改善します。また、多毛やにきびなどの症状も改善されます。
- カウフマン療法:エストロゲンと黄体ホルモンの投与により消退出血を起こします。
- 漢方薬:体質に応じた処方により、月経異常の改善をはかります。
◎ 薬物療法(排卵誘発法)
- クロミフェン療法(クロミフェン):排卵率は50%、妊娠率は10-20%です。
- hMG-hCG療法(ゴナドトロピン療法):多数の卵胞が同時に発育し、卵巣過剰刺激症候群を起こしやすいので注意が必要です。
- 漢方薬:体質に応じた処方により、月経異常の改善をはかり自然排卵をめざします。
- その他:高プロラクチン血症を認める場合にはプロラクチンを下げる薬剤を併用します。
また、クロミフェン無効例(約半数)でインスリン抵抗性を認める場合には、メトホルミンやインスリン抵抗性改善薬を併用します。
◎ 手術療法
- 腹腔鏡下卵巣焼灼術:肥厚した卵巣の白膜を穿通し、卵胞発育と排卵を促します。 術後の自然排卵率は80%以上、累積妊娠率は60%以上ですが、通常1-2年で効果は失われ、再び無排卵になります。